薬理学分野の沿革

1966年4月
薬品作用学教室が設置 (植木昭和 教授)
1974年4月
薬理学講座に改称 (植木昭和 教授)
1999年4月
薬効解析学分野に改称 (渡辺繁紀 教授)
2007年4月
薬理学分野に改称 (井上和秀 教授)

 

 植木昭和 教授 (初代教授:在職期間1966年5月~1990年3月)

1966年4月に薬品作用学教室が設立され,同年5月に植木昭和教授が初代教授として就任した。1974年4月には名称変更され,薬理学講座となった。植木教授は,行動薬理学的手法を用いた中枢神経作用薬研究の草分け的存在として著名で,第54回日本薬理学会年会を主催した。昭和生まれの教授としては,初めての年会会長であった。それ以来,薬理学教室は,行動薬理学的研究において日本の薬理学界をリードしてきた。植木教授の後輩・子弟の20数名が全国の大学教授・准教授に就任している。植木教授は1990年3月に退官した。

 

 渡辺繁紀 教授 (2代目教授:在職期間1990年7月~2004年3月)

中枢神経作用薬の薬理学的研究を,行動薬理学的手法の伝統を継承しつつ,電気生理学的,生化学的手法も駆使して展開した。また,体内時計研究もこの頃新たにスタートした。1999年4月,薬効解析学分野に改称された。渡辺教授は2004年3月に退官した。

 

 井上和秀 教授 (3代目教授:在職期間2005年1月~2016年3月)

井上教授は当分野の出身で,国立医薬品食品衛生研究所においてATP受容体に関する神経薬理学的研究をスタートさせ,同受容体の生理機能や病態(特に痛み)に関する多くの顕著な業績を挙げた。これらの研究を,教授就任後も引き続き展開し,ATP受容体によるグリア細胞の新しい細胞機能や難治性の慢性疼痛である神経障害性疼痛のメカニズムを発見し,それらの成果をNature誌など世界トップクラスの英文誌に数多く報告している(https://yakkou.phar.kyushu-u.ac.jp/)。2007年4月,薬理学分野に改称された。井上教授は,2009年5月に主幹教授の称号を付与され,2010年4月より4年間薬学研究院長(学部・学府長)を努めた。2011年8月からは,創薬育薬最先端研究基盤センター長,2014年1月からは薬学研究院附属産学官連携創薬育薬センター長も併任した。さらに,2014年10月から九州大学理事・副学長に就任し,本学の人事,財務,研究の管理運営に大きく貢献した。井上教授は,グリア細胞におけるATP受容体の役割および神経障害性疼痛の発症メカニズムに関する優れた業績から,文部科学大臣表彰科学技術賞(2007年),日本薬理学会江橋節郎賞(2010年)、日本薬学会賞(2013年)を受賞した。また,2010年にはスペイン王立科学アカデミーからカルロス国王の名のもと外国会員としての資格と会員メダルを授与された。さらに,2014年11月に紫綬褒章を受章した。学会では,日本神経化学会理事長,日本薬理学会理事などを歴任した。また,日本疼痛学会(2008年)、Fukuoka Purine 2009(2009年)、Neuro2010(2010年)、Purine2012(2012年)、日本薬理学会年会(2013年)を主催し,国内外の学会と専門分野の発展に大きく貢献をした。現在は,日本薬理学会,日本神経化学会,日本疼痛学会で名誉会員として活動を続けている。井上教授は2016年3月に薬学研究院を退官し,2020年9月に九州大学理事・副学長を退任した。2020年10月に九州大学高等研究院・特別主幹教授に就任した。